しらさぎ会(12月15日@東京)記録。その3
続きです。(ちなみに「その8」まであります。長い。。)
3.消費税の課税物件とは何か?それを測定できるのか?
エントリー「その2」の消費税の金融取引「非課税」の理由への反論になります。
反論(1) 金利に直接課税しても、事業者側では仕入税額控除が増加し、金融機関側では納税額が増加するので経済全体には中立。ただし、今まで控除対象外であった金融機関側での仕入消費税が控除できるようになるので、国庫への納税は全体では減るかもしれない。
なお、アルゼンチンでは事業者間での資金借入にも課税しています。ただし、住宅ローンなどの事業性ではないものには課税されません。これは、インフレ抑制の目的もあると聞きます。
金利に直接した場合、あらかじめその金利課税相当にあたる分まで借入金額を増やし、手元資金を集めに持っておかなければならないという問題があります。
ニュージーランドでは、「登録事業者」にあらかじめ登録することにより、みなし控除を行うこともできます。この場合、手元資金の準備が不要になる制度もあります。
反論(2)(3)有価証券投資でも、従業員の労働投入、システム費用など生産要素の投入=付加価値の創造が行われている。
また、貸出金の審査=銀行の情報生産活動も付加価値の創造である。
金融取引は資本の振替に過ぎない、ということに対する反論です。
しかし、この論の最大の弱点は(講義では言わなかったんですが)消費税法のどこにも「付加価値が生じたら課税する」とは書いていないことなんです。
銀行は貸出金の実行に際しては、生産要素を投入して付加価値を生産します。これについては、学説としては「銀行の情報生産活動」として常識になっております。
次に、これを消費税の課税物件(課税の対象となる物・行為または事実)であると定義できたとしても、実際に課税を行うにあたってこれを課税標準(具体的に数量や価格)として測定することは困難であると思われます。
銀行は、この情報生産の対価を「金利」の中におり込んでしまい、借り手に際しては明示しないからです。
融資実行手数料100万円、とすれば、これに5%課税できます。
しかし、年2%です、となった場合、そのうちいくらを課税標準として課税すればよいのでしょうか。
この測定困難性が、金融取引が消費税に「なじまない」とされる理由ではないかと思われます。
参考文献も付しておきます。
銀行の情報線活動につきましては、
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課税物件・課税標準につきましては、
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諸外国の付加価値税制につきましては、
Value Added Tax: A Comparative Approach (Cambridge Tax Law Series)
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