銀行の資産変換機能について。
当たり前のように利用している銀行の普通預金口座や住宅ローン。
実はこれらは銀行という金融仲介機関が存在し、資産の性質を変換する機能を持っているから利用可能になっています。
金融に関する池尾教授の「現代の金融入門」に、銀行の資産変換機能について説明されているのですが、これがなかなか理解しづらい・・
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なので、もう少し詳しく、実際の銀行の金融商品を挙げながら説明してみたいと思います。
今すぐ使わない5,000万円の現金を持っていた資金余剰者Aさんと、
土地取得と建築費用が合わせて5,000万円かかる住宅の取得を考えている資金需要者Xさんがいるとします。
資金余剰者Aさんは、とりあえず今すぐは使わないけど、子どもの教育費とか何か資金需要が発生するかもしれないので、いつでも現金に換えられるようにしておきたい。
資金需要者Xさんは、一括で5000万円は払えませんが、分割で月々15万円づつなら返済できる能力はあります*1。
そこで、金融を仲介する銀行は、お金が余っているAさんから5000万円を預かり、普通預金という金融商品を発行します。
普通預金は、Aさんのニーズどおり、いつでも銀行が払い戻しに応じてくれますね。
Xさんは、金銭消費貸借契約証書、一般に言う借用書を銀行に差し入れることで5000万円を一括して借入し、マイホームを手に入れることができました。
この一連の取引により、最初にAさんが持っていた5000万円のお金が、普通預金という金融資産と、住宅ローンという金融資産に「変換」されました*2。
もし、金融を仲介してくれる銀行が存在しない場合、Aさんの「いつでも払いだして欲しい」というニーズと、Xさんの分割で返済していきたいというニーズは一致しませんから、住宅建設という社会に新しい富を生み出す行為は行われなかかったことになるでしょう。
これが、金融仲介機関=銀行が果たす資産変換機能です。
こちらの説明では、Aさん、銀行、Xさんしか登場しませんから、Xさんが返済を進めるまでAさんは預金を払い戻せないのでは?という疑問がでるかもしれません。
しかし、現実には、社会には無数の資金余剰者と資金需要者がおり、資金余剰者がいっせいに預金を払い戻そうとはしませんから、銀行は巨額の預金に比べればわずかな現金を手元に置くことで対応可能になっていますね。
これは法律で義務付けられた日本銀行への準備預金制度とも絡みますが、また別のお話しになりますので、本エントリーでの説明はここまでにいたします。