「同一労働同一賃金」の社会的費用が帰着する先は・・
本日のお題はこちら。
- 作者: 山田久
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2017/02/24
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昨今、「働き方改革」というものが叫ばれておりまして、その前提として正社員と非正規社員の格差をなくすための「同一労働同一賃金」というのが、総理からも目指すべき目標として提示されています。
もともと、欧州では同一労働同一賃金とは、「同一価値労働同一賃金」として掲げられておりました。
これは、わが国政府が目指しているような正社員・非正規社員の経済的格差の是正を目指すものではなく、本人の努力や意思では動かしようがない人種や性別により賃金などの労働条件の格差があってはいけない、という「公正さ」追求目的あったことが紹介されています*1。
著者は、欧州では教育費や介護費用などについて公費負担の割合が大きく、わが国の賃金カーブが(大企業正社員に限り)右肩上がりなのは、教育費などを私費で負担することが前提となっていることも指摘しています。
これらの指摘を踏まえますと、この社会保障制度などの仕組みや人々の意識を変えないまま、同一労働同一賃金を強行してしまうと、どうなるでしょうか。
その帰結として、相対的に余裕のある大企業の体力を削るだけに終わり、所得税や、厚生年金保険料や健康保険料の負担と同じように「狙い撃ちしやすい」「取りやすい」ところである大企業だけに社会の費用を帰着させるという結果になるのではないか。
大企業というのは法人であり株式会社です。
短期的にはこの費用は株主が負担しますが、長期的にはもっとも動きにくい大企業正社員の処遇悪化に至るのではないか。
その方式は、もはや限界に達しているのではないか。
そんなことを感じております。
*1:このためドイツが例に挙げられ、経済的な賃金格差は広がっていることがデータで示されています。