社会と会社における世代間格差への感覚について。
高齢者たちは、受け取っている公的年金について、「自分達が現役時代に納付していた年金保険料が積み立てられて、戻ってきている」のだという「感覚」をもっているようです。
高齢者たちは、「年金が減らされるかも」という薄っすらとした不安はありつつも、減額は国の政策の問題であり、若い現役層の「働き」が悪いから年金が減るという連想には繋がらないようです。
なので、政府の政策への不満を述べることはあっても、目の前の若い現役層に「お前らがちゃんと働かないから年金が減らされる!」などとは来ることはありません。
この感覚は、現実とは関係ない、錯覚です。
実際には、わが国の年金は上記の感覚とは異なって積立方式では無く賦課方式であり、高齢者が受け取っているのは自分たちの掛け金では無く、現役世代の年金保険料からなるわけですが*1。
さて、もう一つ、高齢者が受け取っている年金があります。
大企業で実施されている確定給付型の企業年金です。
本人の掛け金もわずかながらありますが、企業年金の大部分は、会社側からの持ち出しです。
特に、企業年金は4%程度という現在では考えられない運用利回りを前提としているものが多く、実際の運用成果との差額は会社が穴埋めしていることも社員はよく知っています。
なので、自分たちがもらっている企業年金が支給され続けられるかどうかは、会社の経営が維持されていることが条件であることも。
昨今は、定年後再雇用が当たり前となっており、60歳を過ぎてもう企業年金を受給している方が一緒に働いていることも多いでしょう。
そして、冗談のつもりなのか、現役層の若手社員に、こんなことを言うのです。
「わしの年金がちゃんと貰えるかは、お前らの働きにかかっているからな!しっかりやれよガハハ」
それを聞かされる現役社員には、もう同じ確定給付の企業年金は存在しません。
大きく給付水準を切り下げされてしまったり、確定拠出年金に切り替えされたり。
年金だけでありません。定年再雇用のおじいちゃんの経営判断ミスや先送りで、会社の現状がひどく苦しい状況になっている。
年金でも格差があり、仕事の苦労だけは押し付けられている。
会社の中では、社会においては高齢者たちの錯覚であからさまになってはいない世代間格差が目の前に現出しています。
無自覚に「しっかり働け」などと軽口を叩く高齢者世代と。
格差を呑みこんで働く現役社員。
この地獄が社会全体に広がらないことを祈ります。