無料で学べる証券投資理論の講義ノート。
社会人が、独学で新しい分野を学んでいくのはなかなかつらいものです。
教科書を読みすすめていても、当然の前提知識などは説明が省かれていることもあり、周りに質問できる人がいないと詰まってしまうことも。
こんなとき、指導してくれる教員がいればなあ・・と嘆息したりもしますが、実際に大学・大学院へ講義を聴きにいくのは仕事をしながらでは難しい・・
ときに、最近の大学教員の個人HPでは、講義資料が公開されていることも多いです。
実際の講義に使用されているものですので、学び始めた学生さんの理解を助けるようにわかりやすく書かれております。
私がこの頃、勉強している証券投資理論・ファイナンス理論の講義ノートが公開されているのをみつけましたので、ご紹介いたします。
関西大学・太田浩司教授の「企業財務論」講義ノートです。
太田浩司の会計・ファイナンスホームページ
サイト左側の「企業財務論講義」に掲示されています。
サンプルPDF 第7章 財務諸表分析
http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~koji_ota/Lecture_Kigyouzaimuron/kigyouzaimuron2010_07.pdf
ぜんぶで30コマ分ありますので、4単位の講義ですね。
以下の構成になっております。
1~4章 日本の企業市場(株式・債券)
5~6章 産業分析
7~11章 財務分析
12~13章 株式分析
14~18章 ポートフォリオ分析
19~20章 ポートフォリオ・マネジメント
21~24章 債券分析
25~30章 デリバティブ分析
こちら、証券アナリスト試験の「証券分析」(一次レベル)の出題範囲とほぼ同じですね。
これからアナリストの勉強を始めようとする方、興味があるけど、自分に向くかわからない方。
また、学習を始めたけどわからない部分がある方。
もちろん、資格は取らないまでも証券投資理論に興味がある方にも。
講義資料の後半には、穴埋めや簡単な計算問題も付いています。残念ながら解答はありませんが、講義ノートの説明と例題に沿っておりますので、じゅうぶんに自習できることかと思います。
ざっと見たところ、14~18章、19~20章のポートフォリオ理論のところがいきなり数式ドーンで、説明があまり詳しくありません。
こちらについては、このテキストをおすすめしたいと思います。
- 作者: 根岸康夫
- 出版社/メーカー: 金融財政事情研究会
- 発売日: 2006/11
- メディア: 単行本
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学ぼうと思えば、いろいろツールがありますので、ぜひ。
「誤解を招く表現でした」という謝罪作法について。
「これでいいのか。」
投稿を読んだとき、ぎょっとしました。政治的意見は自由であり、何を主張しようともそれはかまいません。
しかし、自分の政治的意見=イデオロギーに沿わない事象に関連したことであれば、直接的には関係のない受験生にまで非難しようとする。
案の定、この投稿には厳しい批判が巻き起こりました。
この投稿は削除され、以下のものに差し替えられました。
「誤解を招く表現であり、お詫びして削除します。」とあります。
この謝罪文を読むと、毎日新聞はこういうことを意図しているのではないかと思われます。
「毎日新聞としては受験生を誹謗中傷するつもりはない。しかし、政治的意図でそれを曲解して非難された。」
「誤解する人々が悪い。自分には悪意はなかった」
これは、謝罪という形をとってはいますが、相手をバカにしているとも感じられます。
「思わず悪意を剥き出しにしてTwitterに投稿してしまった。この表現は政治的な争いとは無関係な受験生を誹謗中傷するものであり、新聞社としてあるまじき表現であったので、謝罪して削除いたします」
こうではないでしょうか。
「誤解を招く表現でした」と言い張れば、表現者はどこまでいっても善意であり、他者の内心を覗くことは不可能である以上、謝罪は不要となります。
人間は、無謬ではありませんし、理由のない好悪の感情を晒してしまうこともあります。
他者からは見えない内心であるとしても、誤りがあれば謝罪する。
私としては、自己の良心を守るために、そうしたいと思います。
善意による包摂よりも、お金で割り切れる関係を。
本日のお題はこちら。
- 作者: 坂本光司
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2017/12/22
- メディア: Kindle版
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「世界でいちばん大切にしたい会社」シリーズで著名な坂本光司教授による「人を大切にする」経営学の講義です。
おそらく、中小企業経営者に向けたセミナー、講演や講義録を再構成したものではないでしょうか。
テーマ別に章立てされていますが、ところどころ重複した記述がありますので。
結論から申しますと、坂本教授のご意見には賛成できません。
本書では、「人財を育てる」「大家族的経営」「全員参加経営」「全社員が共感できる企業理念」など、有り難い、いえ、嫌味ではなく、文字通り存在が難しいようなお話が続きました。
先ほど挙げた「人を大切する経営」ですが、具体性は何もありません。
ここからは推測ですが、坂本教授の理念を有り難がって取り入れようとするのは、多くは、ある程度経営に余裕がある中小企業経営者ではないかと。
何か、自分も「良い経営をしたい」。
そこで、著名な坂本教授の講演を聴きに行く。
坂本教授はこういう提唱をします。
経営者の掲げる理念に没入して労働者が、全人格的に生きがいとして仕事に打ち込む。
先頭に立つのは、講演を聴いてうなずく経営者自身です。
そういう仕事のあり方もあるでしょうし、個人としてそういう選択を自主的に行うことを止めはしません。
でも、そういうことに興味すらなく、ただ仕事をして、生活の糧である給与を得られればそれでよいという考えの労働者はどうしたらいいのでしょう。
人間なら、誰でも仕事のやりがいを求めているはずだ、という大前提があるようです。
坂本教授のそのような人間観は、最後の部分に出てきますので。
しかし、それを最初から望まない人にとって、企業という場に「包摂」されてしまうことは地獄ではないでしょうか。
しかも、経営者は「人を大切にする」として善意なのです。
これは、悪意をもって囲い込まれるよりも、表立っては反論・逃亡しづらいかもしれません。
企業は、人が集まって仕事をするために作り上げたものに過ぎず、全人格を没入するかどうかは、選択できる方が望ましい。
私は、そう思います。
企業経営者は、ちゃんと人として尊厳をもって生きるに足る給与を労働者へ払う。
お金で割り切れる関係。
働く場所である企業と労働者個人の関係。
私としてはそれでじゅうぶんだと思います。
企業金融の仕組みをやさしく学べるテキスト。
本日のお題はこちら。
- 作者: 中島真志
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2015/02/27
- メディア: Kindle版
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企業金融に関するテキストはいろいろなものが出ております。
一般に、コーポレート・ファイナンスの教科書というと、米国のテキストの翻訳か、日本人の手になる本でも直輸入もので、株式と社債で資金調達するのが前提で、馴染みがない記号を使った数式がドーンときて前提がよくわからないまま進んでいく・・という現実感がないものが多いのかもしれません。
実際に中堅以下の日本企業では、銀行借入が資金調達の大部分であり、キャッシュ・フロー経営などというものではなく、「毎月・毎日の資金繰りをどう回していくか」という問題が大きな割合を占めるのが現実であります。
その金融実務の現実と、米国流のファイナンス本はなかなか結びつかないのが現状ですね。
本書は、日本の金融実務を踏まえて、「どうして企業は事業資金を必要とするのか」というそもそものところから始まり、基本的な銀行借入の仕組みから始まって、中小企業がよく利用する信用保証制度、少人数私募債、ベンチャーキャピタルや投資事業組合の仕組みまで解説しております。
数式はほぼ登場しませんし、説明は平易で、経済学や会計学の前提知識がなくともじゅうぶんに理解できる良いテキストだと思います。
米国流のファイナンス本に挫折してしまった方でも、だいじょうぶかと。
著者の中島教授は、元日本銀行職員で決済システムの専門家です。
決済実務担当者のバイブルともいえる「決済システムのすべて」などの著者であり、最近はこちらも「アフター・ビットコイン」も上梓しておりますね。
アフター・ビットコイン―仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者―
- 作者: 中島真志
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2017/11/10
- メディア: Kindle版
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すらすらわかるヤマダ電機の追徴課税のお話。
こんな報道を見かけると、私はいそいそと有価証券報告書などの開示書類を見に行って「どうしてやらかしてしまったか」をあれこれ推測してみるのを趣味にしております。
www.sankei.com
報道によりますと、ヤマダ電機の税務申告の誤りの内容は次のようなものです*1。
ヤマダ電機は中国に設立した子会社に米ドル建てで貸し付けた債権の一部について、決算期末時のレートではなく、貸し付け時のレートで円に換算して税務申告していた。貸し付け時から決算期末までに円安ドル高が進んでおり、この間に生じた約28億円の評価益が計上されていなかった
ヤマダ電機の子会社への貸付の内容を確認してみたいと思います。
連結ベースを中心とする(金融商品取引法に基づく様式である)有価証券報告書では、連結相殺され、注記にも出てこないため、詳細がわかりません。
そこで、計算書類等の単体財務諸表に出てくる「関連当事者注記」を見にいきました。こちら、会社法固有の注記で、子会社と親会社の取引で重要なものがあれば注記されております。
(東証サーバーがメンテ中でリンクが貼れません。後ほど。)
注記をみますと、北京と瀋陽に設立された中国現地法人に、約130億円づつ、260億円の貸付がおこなわれていることがわかります。
こちら、報道によるとドル建てのようです。
この注記だけでは、期末に為替換算されているかは読み取れません。
次に、有価証券報告書の単体、税効果注記を参照します。
www.yamada-denki.jp
29年3月期有価証券報告書112ページですね。繰延税金負債内訳に「為替差益」が13億~26億とあります。
外貨建資産の換算のルールですが・・
企業会計上は、期末時のレートで換算し、発生時との差額を為替差損益として認識します。
1ドル=100円で貸付した子会社向け貸出金が、期末1ドル=110円になっていれば、1ドルあたり10円分の為替差益を認識することになります。
税務上は、少しルールが複雑でして、短期(1年以内)のものは期末の換算替えが強制、長期のものは発生時のレートそのままで計上するか、換算替えするか選択制になります。
税務署長へ届出をすれば換算方法を選べますが、届出をしない場合、長期の外貨金銭債権については法定の換算方法である発生時換算法になります。
期末換算で税務署長へ届出すれば、会計と税務が一致するはずですので、税効果=会計上の資産負債と税務上の資産負債のずれは生じないはずです。
ヤマダ電機は会計監査を受け、適正意見を受けていますので、企業会計上の外貨換算は期末日のレートで換算しているでしょう。差額は為替差益として損益計算書に計上されますね。
これに対し、税効果を認識しているということは、税務上は発生時のレートのまま換算し、申告減算しているものと思われます。
しかし・・先ほど説明しました通り、短期の外貨建て金銭債権については税務上、期末換算が強制されます。
この部分まで、税務上発生時レートで申告してしまったのか、あるいは、過去に税務署長へ長期の外貨建金銭債権まで期末換算で届出しているのにもかかわらず、申告は発生時レートでやってしまったか。
いずれにせよ、悪意はなく、単純なミスと考えられます。
でも、申告を間違うと加算税を取られますし、こんなふうに報道されると私みたいな物好きがノコノコやってきて、あれこれ推測されちゃうことにもなるわけです。
ところで、税務調査にあたる国税局の職員は厳重な守秘義務を負うはずです。
なんで、こうやって報道されてしまうのでしょう。
不思議ですね。
終わり。
*1:40億円申告漏れで6億円追徴だと、税率をかけても計算が合いません。 推測:外貨建金銭債権の換算差益は翌事業年度洗い替えで所得減算になるのですが、報道ではその減算した部分を計算にいれず、加算された金額だけを積み上げているのではないかと。税効果の加算一時差異の数字ともなんとなく合います。この辺りは推測の推測ですし、あまりに専門的なのでブログ記事本文には書きませんでした。 マスコミの報道姿勢の「癖」として、申告漏れの金額は大きい方が注目されますので、こういう集計の仕方をしたのではないかと。(空想です
無理な残業削減による事故まで段階について。
昨今、「働き方改革」というものに取り組んでいない企業は無いのではないかと思います。
働き方改革、それが何を意味するのかは必ずしも定まっておらず、一部では、時間外勤務手当を払いたくない=人件費削減のために「改革」を掲げているところもあるように聞いております。
人件費削減目当ての働き方改革では、そもそも「仕事のやり方」を見直そう、という発想には至らないことが多く、ただ「残業は禁止、早く帰れ」ということだけが強調されてしまう傾向が。
やり方を変えないのに残業はできない。
最初の段階では、スタッフたちは「手を早く動かす」「昼休みを短くする、そもそも昼休みを取らない」という手段を採るしかありません。
そんな手段で時間外勤務が削減できるなら、苦労はしません。
あまり、効果はあがらないわけです。
そうすると管理職はイライラ。「なぜ残業が減らないんだ!」と。
何も対策をしない管理職と、ぎりぎりでこなしているスタッフの間で相互不信が巻き起こります。
さらに無策なままでの残業の削減を強制されると、次の段階でスタッフが採る手段は、「仕事のランダムな選別」です。
スタッフは情報が限られていて全体が見えず、捨ててもいい仕事、後回しにしていい仕事を判別できないことが多いのに。
やらなきゃいけない手順を飛ばす、チェックをしないで処理してしまう。
そろそろ事故発生の危険性が高まってきました。
最後の段階は、仕事そのものを隠して放置する。
こうなると、顧客とのトラブル発生、事故発生が目の前です。
今、あなたの職場はどの段階にあるでしょうか。
それとも、こんな話とは無縁でしょうか。
嫉妬という厄介な感情とつきあっていくことについて。
お金持ち。
素晴らしい恋人/配偶者がいる。
やりがいのある仕事をしている。
頭が良くて、一度聞けば理解できる。
人の属性や境遇は、いろいろです。
自分が持っていない属性を持つ他者、あるいは自分がその人より劣っている、少ない。
羨ましい、と感じるのは、自分がその属性を欲しくても得られない場合でしょうか。
嫉妬を感じると、苦しいばかりで良いことはありません。
求めても得られないという渇望感に加えて、嫉妬という卑しむべき感情に自分が捉われているという罪悪感のようなものも。
嫉妬することで、二重の苦しみを味わってしまうわけです。
他者の境遇について、「羨ましい」という嫉妬の感情をまったく感じないというのは、神ならぬ生身の人間であれば、やむを得ないことかもしれません。
私も、ある属性や境遇にはひどく嫉妬してしまいます。
嫉妬の感情が沸き起こったら、自分はなぜ、どうして、何に対して嫉妬しているのか。
そう自問自答することで、この厄介な感情とうまくつきあっていくしかないのか、とも考えております。