単純化された嘘と複雑な現実について。
また、消費税の輸出免税の仕組みから発生する還付金について、これを「輸出戻し税」という名称で呼び、トヨタなど輸出大企業が不当に利益を得ているかのようなweb記事タイトルを見かけました。
「輸出戻し税」というデマは定期的に出てくるけど
— すらたろう (@sura_taro) 2017年7月12日
消費税の仕入税額控除とか輸出免税による国境税調整とか専門的かつ技術的な話なので
「トヨタは現金を還付されている!けしからん!!」という表面だけしか見てないデマ攻撃が圧倒的にウケますからね😔
これは、人々が複雑な消費税の専門的・技術的な仕組みに通じていないことにつけ込んで、輸出企業が不正な利益を上げているかのような印象操作を行おうとする、悪質なものであると断じざるを得ません。
以下、なぜこの還付金が生じるのか、簡潔に説明します。
消費税は、「受け取った消費税」から「支払った消費税」を控除し、差額だけを国庫に納付するという仕組みになっています。
「受け取った消費税」が「支払った消費税」より少ない場合、控除し切れなった差額は還付されますね。
輸出は、国際的な税の決め事として、消費税(付加価値税)は実際に消費される国で課税されることが原則となっています*1。
そのため、輸出に際しては消費税が「免税」になっています。
トヨタなど輸出が多い企業は、輸出先から消費税を受け取ることがありません。そのため、恒常的に「受け取った消費税」が「支払った消費税」よりも少なくなり、還付金が発生することになるわけです。
還付金は、自社が仕入先に払った税額相当が控除し切れずに戻ってきているだけなので、企業会計上も課税所得計算上も利益になるものではありません。
消費税の仕入税額控除は、輸出大企業だけに認められた特典ではありません。
国内だけで事業をしている企業も公平に適用されています。
消費税だけではありませんが、税法は複雑で専門的な計算規定を備えており、税を専門にしない一般市民に容易に理解できるものではありません。
また、消費税は、人々が身近に接する税ではありますが、まだまだ歴史が浅く、導入や税率引き上げに際しては激しい政治的反対を受けてきました。
複雑な現実を無視し、消費税への嫌悪感を利用して、「還付金という現金を受け取っている=不正な利益だ!」という表面の事象だけをなぞった「単純化された嘘」。
「大企業は不正を働いている、自分たちは虐げられた弱者だ」という気持ちのいいストーリーを読めば、情報に疎い人々も、一瞬の満足感を得られるのかもしれません。
気持ちの良い嘘のストーリーを定期的にwebに書くジャーナリストを自称する人々の側と、ストーリー供給を待っている情報に疎い人々の側。
何度も繰り返される「輸出戻し税」の悪質な印象操作記事は、両サイドの人々が存在することによって成り立っています。
これも、この社会の複雑な現実の一幕なのではないか。
そう感じております。
大企業の税負担をめぐるデマに関しましては、こちらの過去ログもご覧ください、