すらすら日記。

すらすら☆

働くことと、人間の尊厳について。

企業組織内部においても、コンプライアンスが叫ばれる昨今です。

建て前としては、どの社員も、人として尊重され公平に扱われなければならない、とされています。

ただし、社員も皆、同質なわけでは無く、仕事を与えられても期限を守れない、成果物の品質が低いという人がおります。

仕事が「できない」社員というものが存在するわけです。

その人は次のような扱いを受けてしまいます。

上司からは叱責され、若手からは軽侮され、果ては補助的な仕事をしているパート職員にまで「できない人だよね」などとウワサを立てられてしまう。

公平処遇を建て前としつつも、人間の集まりである以上、その職場での価値が低いとされてしまえば、日常的に尊厳を傷付けられてしまうようなことがおきる。

日常的にバカにされていて、ニコニコしていられるのは稀でして、そんな人はいつも不満顔でいたり、なにかオドオドしていたりも。

そうなると、ますます嫌われて孤立したり。


仕事ができないというのは、その職場内だけでして、部署が変われば別な能力を発揮したりする方もおりますが。

問題は、どこに行っても仕事ができないままで、どこでも持て余され、あちこちの部署を転々と異動させられるような方も。


働くことは、人生の多くの時間を占めているわけで、尊厳を傷付けられながら毎日を過ごすのは、あまりに不幸ではないかと。

周りの人間にそういう扱いは止めろといって、実際に守られるとはとうてい思えません。

ならば、不満顔を抱えて働き続けるよりも、また違う組織、違う仕事があるのではないか。



社内のあちこちで我慢を抱えている人を見るに、働くことと、人間の尊厳について、考えています。




「公正な社会」はとても残酷だというお話。

本日のお題はこちら。

人生の勝算 (NewsPicks Book)

人生の勝算 (NewsPicks Book)

「誰でもすぐに生配信が可能な、双方向コミュニケーションの仮想ライブ空間」SHOWROOMの創業者、前田裕二氏の半自伝的な一冊ですね。

前田氏は、早くに両親を亡くしながら、苦労して進学、投資銀行勤務を経て実業家への道を歩んだそうです。

本書に繰り返し出てくるのは、「生まれや育ちで人生が決められてしまうような不公正な社会を変えたい、努力すれば必ず道は開けるということを証明したい」という情熱です。

社会に公正さを求める気持ち、賛同したくなります。



しかし、「公正な社会」というのはある意味、残酷ではないかと。

公正世界信念、という人々に広く信じられている心理状態があります。

成功している人は、努力して成功に値する能力を示したから。

不遇な人は、努力が不足しており、能力が劣っているから。

世界は公正にできているので、成功や失敗にはきちんとした理由がある。


実際には、前田氏がいうとおり、世界は公正ではなく、生家が金持ちであれば高い教育を受けて成功しやすい。
貧しい生まれであれば、そもそも努力する機会すら得にくいという現実があるわけです。



では、前田氏がいうような公正な世界が実現したとしたら。

不遇な人が、「これは俺の努力が足りないのではない、社会の仕組みが悪いのだ」という慰めを得ることができなくなります。


公正な世界では・・



「不遇なの?それはあなたの努力が足りないからだよね。」



こんな残酷な現実に、人は耐えられるでしょうか。

前田氏の情熱には共感しつつも、そもそも努力が出来ない人、努力しても途中で挫折してしまう多くの人々を見てきただけに。

少し、躊躇いをもってしまうのです。




単純化された嘘と複雑な現実について。

また、消費税の輸出免税の仕組みから発生する還付金について、これを「輸出戻し税」という名称で呼び、トヨタなど輸出大企業が不当に利益を得ているかのようなweb記事タイトルを見かけました。

これは、人々が複雑な消費税の専門的・技術的な仕組みに通じていないことにつけ込んで、輸出企業が不正な利益を上げているかのような印象操作を行おうとする、悪質なものであると断じざるを得ません。

以下、なぜこの還付金が生じるのか、簡潔に説明します。

消費税は、「受け取った消費税」から「支払った消費税」を控除し、差額だけを国庫に納付するという仕組みになっています。
「受け取った消費税」が「支払った消費税」より少ない場合、控除し切れなった差額は還付されますね。

輸出は、国際的な税の決め事として、消費税(付加価値税)は実際に消費される国で課税されることが原則となっています*1
そのため、輸出に際しては消費税が「免税」になっています。

トヨタなど輸出が多い企業は、輸出先から消費税を受け取ることがありません。そのため、恒常的に「受け取った消費税」が「支払った消費税」よりも少なくなり、還付金が発生することになるわけです。

還付金は、自社が仕入先に払った税額相当が控除し切れずに戻ってきているだけなので、企業会計上も課税所得計算上も利益になるものではありません。

消費税の仕入税額控除は、輸出大企業だけに認められた特典ではありません。
国内だけで事業をしている企業も公平に適用されています。

消費税だけではありませんが、税法は複雑で専門的な計算規定を備えており、税を専門にしない一般市民に容易に理解できるものではありません。

また、消費税は、人々が身近に接する税ではありますが、まだまだ歴史が浅く、導入や税率引き上げに際しては激しい政治的反対を受けてきました。

複雑な現実を無視し、消費税への嫌悪感を利用して、「還付金という現金を受け取っている=不正な利益だ!」という表面の事象だけをなぞった「単純化された嘘」。

「大企業は不正を働いている、自分たちは虐げられた弱者だ」という気持ちのいいストーリーを読めば、情報に疎い人々も、一瞬の満足感を得られるのかもしれません。

気持ちの良い嘘のストーリーを定期的にwebに書くジャーナリストを自称する人々の側と、ストーリー供給を待っている情報に疎い人々の側。

何度も繰り返される「輸出戻し税」の悪質な印象操作記事は、両サイドの人々が存在することによって成り立っています。

これも、この社会の複雑な現実の一幕なのではないか。

そう感じております。


大企業の税負担をめぐるデマに関しましては、こちらの過去ログもご覧ください、

sura-taro.hatenablog.com



*1:少数意見ですが、輸出免税という「国際的な税の決め事」自体が税の公平性に反するという立法論もあります。輸出取引を免税では無く金融取引などと同じく非課税とし、仕入税額控除を取れない仕組みとする税制とする提案もあります。こちらの立法を行った場合の経済的帰結については様々な影響が考えられますが、本稿では輸出企業の競争力に不利に働くということのみ述べておきます。

現実的なキャリアの選択肢の選び方について。

本日のお題はこちら。

働けるうちは働きたい人のためのキャリアの教科書

働けるうちは働きたい人のためのキャリアの教科書


キャリアを考える本やweb・雑誌記事といいますと

「海外の大学院へ進んでMBA取得!」などというごくごく限られたエリート層を対象にしたようなもの、

「難関資格を取って人生逆転!」のような大きな夢を語るようなもの、

「まだ大都会で消耗してるの?」のような、サラリーマンを「社畜」と蔑んで田舎暮らしや独立起業を無責任に煽り立てるもの・・

どれも極端な話ばかりで、読んでもあまり現実味がなさそうなものが多いようなイメージがありました。

それらとは異なり、本書は、どこにでもいるようなごくごく平凡な中高年ビジネスパーソンが、セカンドキャリアとして選択し得る現実的な選択肢を示し、それらのうちどれを選んだらより良い人生を送れるかというアドバイスを述べております。

選択肢は、①今の会社に勤め続ける②転職する③出向する④独立起業するという4つです。

著者は、どれがベストか、正解だというのははっきりとは推薦しておりません。

それぞれについて、メリット・デメリット、著者が遭遇した成功例・失敗例を豊富にあげております。

どの選択肢を選ぶにせよ、自分自身と家族がじっくりと準備をして考え抜いて道を選ぶことを勧めています。

「なんとなく」「準備もしないまま」やってしまうと、失敗や後悔が待っていると。

50代くらいの方に向けて書いた本のようですが、キャリアの行く先を考える30代~40代くらいの方でも興味深く読めると思います。

「なんとなく」働いている方でも、何かヒントを得られるでしょう。

引用とノートはこちらも。
twitter.com



自己の選択肢の正しさの確認の方法と程度について。

進学、就職、結婚、転職、独立して自営業になる、離婚する、日本を離れて外国で暮らす。

人生には、いろいろな選択の連続であり、岐路においてどちらかを選ぶことを迫られます。

後から振り返って、自分の選択肢は正しかったのだろうか、と思うこともあるでしょう。

今、それなりに幸せに暮らしていれば、あの時の選択は正しかったとなりますし、

今、ちょっと不幸せで他者の芝生が青く見えていれば、あの時は誤ったなどとも。


上手く生きていると思い、自己の選択を後づけでの理由で正当化するのは誰しもやっています。

ところが、それだけでは不安なのか、自分が選ばなかった道にいる人を「バカだ」「なぜこっちに来ない」などとやっている方をインターネット上で見かけることがあります。


都会であくせく働く会社員の人生はくだらない。

自立して自由に生きよう。


などなど。

幸せの形は人の数だけあるわけですから、自分の選択肢の「正しさ」は自分だけで確認すればじゅうぶんです。

他者には、他者の選択肢があり、それぞれの人生を送っている。

自らの選択が本当に正しかったのか、不安なのかもしれません。

でも、その不安は、他者の選択肢を貶めることでは鎮めることはできません。


それぞれの道を、時々振り返る程度で。

それぞれで歩いていくしかないのではないか。

私は、そう思っています。



正義感が、憎悪と怒りに転換してしまっている人々について。

SNSを眺めていますと、「世界が自分の理想としている姿と異なる」と毎日毎晩、怒っている人々が目に付きます。

その人々から見ると、世の中は不正と理不尽に満ちており、為政者は民衆を窮乏に陥らせるために陰謀をめぐらしている、ということになっているようです。

実際には、世の中には、不正や悪はありつつも、それなりに善き意思を持った人々がいて、それぞれの仕事を分業することで維持されているのではないかと。

でも、毎日毎晩、何かに怒っている人は、その人の自分の中で想像して作り上げている歪んだ像が最初にあって、後はそれを証拠づける断片的な「事実」を自ら集めにいっているだけ。

良い面、善意の人々は存在しないかのように憤り、誰かを攻撃せずにはいられなくなっている。

完全な理想世界など、どこにも存在しません。

なぜ、有限な人生のなかで、あえて、不正や悪だけを自ら探しにいき、それに向かって怒ってみせるという不毛なことばかりしているのでしょう。

悪や不正を見逃せとは言いません。

緊急に解決しなければならない問題、捨ててはおけないこともあるでしょう。

最初は、素朴な正義感から始まったのかもしれません。

でも、不正や悪にばかり捉われ、さらには自分で虚像に過ぎない陰謀の存在まで想像して作り上げて憎悪を剥きだしにしているのにみるに。

憎悪と怒りが目的化してしまっている。

人の心は、こんなにも歪んでしまうものなのかもしれない、と。

その人々の心が、休まる日は来るのでしょうか。



「正しいこと」が伝わらないもどかしい人生について。

本日のお題はこちら。

生涯投資家 (文春e-book)

生涯投資家 (文春e-book)

数々の上場企業の株式を取得して、投資家として経営者へ向けて経営改革を迫った村上ファンド代表、村上世彰氏の回想です。

村上氏、2006年にライブドアに絡んだインサイダー事件で逮捕され2011年に最高裁で有罪が確定します。

その後も沈黙を守っておりましたが・・本書は最初で最後の回想にするつもりのようですね。

通産官僚からオリックス宮内社長との出会いを経て村上ファンドを設立。

東京スタイルへの日本初となる敵対的TOBから始まって、

ホリエモンとも交錯したニッポン放送・フジテレビへの投資、

西武鉄道阪神鉄道への改革提言など。

私も同時代で見てきた様々な行動については、特に目新しい事実などはありませんが、あの時、村上氏はこういうことを考えていたのか、ということが。

当時、メディアで切り取られて報道された村上氏の表情や断片的な言葉とは、ずいぶんと受ける印象が異なりました。

村上氏は、とても「真摯」な人物であるな、と。



経営者は、株主から委任を受け、投資家から託された資金を最大限、効率的に活用して企業価値を高めるべく行動するべきだ。

相互保身のための持合株式などは許されない。

有望な投資計画がないなら、余剰現金は配当や自社株買いで株主へ還元すべきだ。


村上氏の提言は、今にして思えば当たり前のことです。



村上氏は、投資家として経営者に面談し、上記のような経営改革を提言します。

しかし、理解してもらえず、話が通じません。

そうなるとキツイ言い方をしたり、途中で席を蹴って立ち去ってしまったりを繰り返してしまいます。

そういう断片がメディアに切り取られてバッシングの材料にされたのでしょう。

既存の経営者には拒否され、マスメディアに先導された一般社会からは叩かれる。

最後は、裁判官にまでに「金儲けはけしからん」と批判されてしまうことに。

「正しいこと」が伝わらないもどかしい人生であったのかもしれません。


しかし、村上氏の主張は、

2014年に公表されたROE8%以上を目指すべきという伊藤レポート、

投資家のためのスチュワードシップ・コード、

企業のためのコーポレートガバナンス・コードでほぼ企業社会全体への要請として常識化してきたようにも思われます。

村上氏は、登場が、早過ぎたのでしょう。

それでも、村上氏はなんとか日本社会が良くなって欲しいという思いから、自分の信ずることに従い投資活動を続けています。

その主張に、今でも賛否はあるかもしれませんが、メディアの断片ではなく、本人の言葉をぜひお読みいただきたいと思います。

内容の詳細や引用はこちらも。
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