すらすら日記。

すらすら☆

世界はより不平等になっている?

本日のお題はこちら。

大不平等――エレファントカーブが予測する未来

大不平等――エレファントカーブが予測する未来

本の表紙をご覧ください。

象が長い鼻を伸ばして持ちあげているかのようなグラフが描かれています。
これは、1988年~~2008年、ベルリンの壁崩壊のちょっと前から、リーマン・ショックで顕在化した世界金融危機までの間の時間軸で、世界の一人当たりの実質所得の伸びを、所得階層ごとに表したものです。

このグラフは、その形からエレファント・カーブと呼ばれます。
グラフが示している、象の鼻の先の部分は、所得階層のいちばん上にいる欧米日など先進所得の富裕層の所得の伸びです。
大きく所得を伸ばしていることがわかりますが、その絶対人数はとても少ないです。

象の頭の部分は、中国、インドなど新興国で従来、貧しかった人々が経済成長の恩恵を受け、大きく所得を増やしています。

象の鼻が地面について、垂れている部分。所得がぜんぜん伸びていない階層。
ここが、欧米日などの中間・下位所得層です。

1980年代末に冷戦が終わり、情報通信技術の発展と人の資本の移動の自由化=グローバリゼーションで世界はより豊かになりました。
しかし、経済成長の恩恵はすべての人々に平等に分け与えられたのではなく、富裕層がその半分弱を取り、残りは新興国がとり、先進国の中間下位所得層はよくて現状維持か、あるいは逆に所得を減らしています。

世界の不平等は、国と国の比較では解消に向かっている場合もありますが、それぞれの国の内部では中間層が所得を減らす一方で、富裕層への集中化が起きている。

経済成長が続いていた過去においては、分厚い中間層がいて、左右の過激思想を忌避して安定して統合された社会を維持されていました。

成長の配当の歪みで、安定した社会が維持できなくなり、社会が分断されて過激主義思想が広がっているという現実があります。

本書は、様々なデータを示して、この現状と原因を探っております。

難しい数式は登場せず、グラフと文章だけで論が進められますので、ごく初歩的な経済学の知識があれば、興味深く読み進められることと思います。

最後の章で、今後、世界の不平等は解消に向かうのか、その方法は何かについて簡潔に述べられています。
著者のミラノヴェィッチの見解は、あまり楽観的なものではありません。
教育投資と資産の相続で、不平等な状態が親から子へ固定されて受け継がれており、それを解消するのは政治の力でも難しいし、教育機会の均等化でも難しいと。

日本でも、政界も財界も親から子へ受け継がれる王朝化が進んでいる米国ほどではありませんが、富の集積が進みそれが相続されていくという現実があります。

富裕層の子は、富裕層のまま。
貧困層の子は、貧困層のまま。

政治の場で議論されている大学無償化などの改革では、これを解消するのは難しそうですが。
本書には、現実がどうなっていて、どうすればいいのかについて、考えるヒントがちりばめられております。

世に流布するポジショントークの波から離れて、不平等の問題を考えるたい方に、一読をおすすめしたいと思います。

こちらも合わせてどうぞ。
twitter.com



すらすら日記。は、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。